保険適用拡大でも喜べず…「禁煙治療薬」はこんなに危険

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 禁煙するのは世の流れとあって、厚労省は禁煙治療の保険適用を拡大しようとしている。これまでの対象は、「1日の喫煙本数」と「喫煙年数」を掛けて計算した数値が200以上に限られていたが、この条件を外すという。厚労省の諮問機関・中央社会保険医療協議会で議論され、早ければ来年度にも実現する見通しだ。

「条件式による選別は、喫煙年数が長い中高年やヘビースモーカーには有利ですが、1日の喫煙本数が少ない人や未成年を含む若年者は不利になります。しかし、保険適用から外れる人もニコチン依存になりやすく、やがてたばこによる健康被害を招くのです。そこで、条件を外して、保険適用を拡大すれば、厚労省の一時的な医療費負担は増えますが、将来的には肺がんや脳卒中、心筋梗塞などに伴う医療費が減る。厚労省は、そんな考えから、禁煙治療の保険適用拡大を検討しているのです」(厚労省関係者)

 禁煙補助薬にはニコチンを含む貼り薬ニコチンパッチと、ニコチンを含まない飲み薬バレニクリンがあるが、問題はバレニクリンだ。米国では「重篤副作用件数ワースト1位」になったこともある危険な薬なのだ。

 医薬情報研究所「エス・アイ・シー」の医薬情報責任者・堀美智子氏が言う。

「バレニクリンによる副作用は、吐き気や不眠、うつ状態、意識喪失などがあり、服用後に車を運転した人が事故を起こしたケースもあります。服用中は運転を避けることです。また、うつ病や統合失調症など精神疾患を抱えた方は副作用が重くなりやすく要注意です」

 医薬品医療機器総合機構によれば、未遂も含めて自殺も08~12年に28件確認されているという。喫煙の低年齢化が問題だとしても、自殺リスクがあるような薬を精神が未熟な若者が服用したらどうなるのか。しかも、保険適用後の動向を調べた調査では、服用から9カ月後の禁煙成功率は約47%と、決して高くはない。保険適用拡大で、トクするのは製薬会社だけか。

関連記事