徹底解説 乳がんのなぜ?

乳房再建手術 全適時に行うか後で行うか

北斗晶と佐々木健介夫妻
北斗晶と佐々木健介夫妻(C)日刊ゲンダイ

 乳がんで乳房の全摘出手術を受けた北斗晶(48)のように乳房を失ってしまった場合、「乳房再建手術」という選択肢がある。乳房再建の国内第一人者である「ブレストサージャリークリニック」(東京・港区)の岩平佳子院長に聞いた。

 押さえておくべきは、「乳房再建はマスト」ではないということだ。乳房再建手術は、自家組織あるいは人工物を使用して新たに乳房を作り出す。「自分の乳房でなければ、欲しくない」という女性がいたっておかしくない。

「乳房再建をするかどうかは、患者さん自身が決めることです。当院に再建手術を受けにいらっしゃるのは、“温泉に行きたい”“ゴルフの後、みんなでお風呂に入ってから帰りたい”“水着やラウンドネックのTシャツを着たい”“乳房を失ったことを忘れたい”といった考えをお持ちの方です」

 乳房再建手術は、「シリコーンなどの人工物を使用」「お腹や背中から取った自家組織を使用」の2つの方法がある。岩平院長は、現在は人工物での乳房再建しか行っていない。

「片方を自家組織、もう片方を人工物使用で乳房再建した患者さんが、“人工物の方が本当に楽”とおっしゃる。自家組織は入院期間も長く、体の負担も大きいのです」

 乳房を全摘すると、皮膚には収縮する働きがあるので、膨らみがなくなってしまう。そこで「エキスパンダー」という組織拡張器を乳房の膨らんでいたところに入れ、皮膚を伸ばす。生理食塩水を注射針で1~2カ月に1回注入し、8カ月の目安で適度な大きさまで膨らませる。その後、シリコーンを入れ、患者の希望に応じて、乳輪、乳頭を再建するのが、乳房再建手術の一連の流れだ。

 このエキスパンダーを入れるタイミングには、①「全摘時、同時に」②「全摘後しばらく経ってから」の2通りある。②の場合、皮膚を一から伸ばすこと、すでに筋肉も萎縮していることから痛みを伴うこともある。

「①も②も“どっちがいい”というものではありませんが、①の方がスムーズに治療が進む。エキスパンダーを入れても当分の間、シリコーンを入れ替える乳房再建手術を受けないという選択肢もあります」

 乳房再建手術は2年前に保険適用になったが、岩平院長の患者の中には、「エキスパンダーを入れたけど、乳房再建手術が保険適用になるまで手術を待つ」と、2年前までの5年間、そのままでいた人もいる。

 乳輪、乳頭の再建は、乳房の膨らみが再建されて1カ月以上経ってからが一般的。乳輪再建は、タトゥー(入れ墨)か、全摘していない側の乳房から乳輪を一部切除し、移植する方法がある。

「タトゥーは、患者さんのもうひとつの乳輪に似るように、何色かのインクを混ぜて色をつくり、入れていきます」

 乳頭は、「全摘していない側の乳房から乳管を数本採取し、神経とともに移殖」「乳房の皮膚を星形に切って組み立てる局所皮弁法」「タトゥー」の3つの方法がある。

 乳輪タトゥーは乳房再建と違い、保険適用ではない。医療機関によって異なり、「ブレストサージャリークリニック」では約20万円である。