独白 愉快な“病人”たち

お笑い芸人 村上ショージさん(59) 急性A型肝炎

村上ショージさん
村上ショージさん(C)日刊ゲンダイ

 1年前の2月、明石家さんまさん主催の舞台の1カ月前から、なんや風邪が抜けないようなダルさが続いていたんです。病院にも行き、正月にオーストラリア旅行で食べた生ガキがあたったのでは……ということで様子見をしていた。

 ところがダルさは増すばかり。稽古が始まると休憩中は無駄話もできなくなり、「そんなに食うたらバカになるで」と言われるほどだった食欲も落ちた。1月の東京公演前後は、内緒で点滴を打ちながらなんとかこなしました。

 東京公演から4日後、大阪公演当日の朝、どうにもひどくなって、診療所に行くと、大きな病院に行けと言われ、検査したら肝機能のγ―GTPが5600もあった。普通なら20~30、ひどくても200ぐらいやのに、医者も「3000は見たことあるけれど、5000なんて見たことない」と。急性A型肝炎でした。

「今入院しないと死にますよ!」と脅され即入院。さんまさんは、公演自体を延期にするという決断をしました。舞台は100人ものスタッフが動きますからね。さんまさんは大きな負債を出してしまいました。

 入院すると黄疸が出て、肌も、目の色も、尿も黄色。まず糖尿がひどいのでカロリー制限とインスリン注射の治療。一生インスリン注射生活かもしれないと聞いて、初めて事の重大さに気づいた。入院も初めてで、このまま舞台に立てずに「死ぬ」と思うと本当に怖かった。

 さんまさんが見舞いに来て「元気ないな~、リンゴでもむけ」ってボケをフラれても、まったく反応できなかった。そうそう、ガダルカナル・タカさんが生ガキを土産に持ってきたら、看護師さんが激怒しちゃった。「芸人のギャグです」って言うても通じませんでした。

 病気の原因は、今までの暴飲暴食です。飲んだ後は必ず大好きなラーメン屋に行って何も考えず食べていましたから。

 指導を守ったおかげで、1カ月後にはなんとか退院。それからは1食600キロカロリーの食事制限と運動が必須になりました。食事はどこに行っても、まずサラダ。野菜を先に食べて糖のとりすぎを防ぐよう指導されました。コンビニに行くと、袋を裏返してカロリー表示を見て、「うゎ、こりゃアカン!」なんてブツブツ言いながら食べるものを探した。

 仕事に復帰してからは、食事の前にインスリン注射。痛々しいから、飲み屋のトイレに行って隠れて注射をしてました。

 それから運動。両足首に500グラムのおもりをつけて、毎日10キロのランニング。背中にゴルフのパター背負って行って、途中の公園で素振りして。週3日は走って、仕事に行くときもいつも足におもりをつけてます。

 最初はしんどかったけど、「死ぬ」と言われたから意地でもやりました。そのくらい入院している間、ひとりでいるのが怖かった。

 摂生生活をきちんと続けたおかげで、4カ月後にはインスリン注射は不要になった。注射と縁が切れたのは奇跡です。

 今年の正月、さんまさん恒例のオーストラリア旅行に行くとき、搭乗口でひっかかった。ベルトも何も全部外して「何やねん」って思ったら、犯人は足首のおもり。トレーニングが日常になりすぎて気づかなかった。お笑いもそのくらい努力したらいいんですけどね。

 体重も11キロ減、服のサイズがLからMに変わり、うれしいような悲しいような。酒はゼロにはできないけれど、その分ランニングで帳尻を合わせるようにしています。

 A型肝炎を患って、健康の大切さが身に染みて、今ではさんまさんや周りの人の健康まで気になるようになりましたよ。

▽むらかみ・しょーじ 1955年愛媛県生まれ。77年に吉本興業に入り、「何人トリオ」でブレーク。25日(水)から29日(日)に沖縄で開催される「島ぜんぶでおーきな祭 第7回沖縄国際映画祭」、「よしもと沖縄花月」「沖縄おもろおばけ屋敷」に出演予定。