独白 愉快な“病人”たち

発明家 中松義郎さん(86) 前立腺導管がん

中松義郎さん(C)日刊ゲンダイ

そこで千葉の重粒子医科学センターに行くと、重粒子線治療をした患者は今まで2人だけで、2人ともうまくいかなかったので、3人目のあなたが挑戦しても死ぬであろうという見解。ダヴィンチによる部分切除は、患部を切除するために頭を30度下げた状態を長時間続けなくてはならない。そうすると緑内障や、下手をすると盲目になる可能性が高いので難しい。残るは全摘だが、これもまた転移する可能性がある──と、手段が何もない。

 ならば、がん先進国のアメリカへと、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学に行っても、導管がん患者自体が非常に少なく、治療実績がない。治療法も単なる提案にすぎない。

 これは自分自身で治療法を“発明”するしかない。フロッピーディスクを発明したのは東大2年のころで、実現化したのは25年後。でも、余命宣告から考えると、今回はそうはいきません。

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