徹底解説 乳がんのなぜ?

左右の大きさ、位置が違う!保険適応以降トラブル続出

北斗晶と佐々木健介夫妻
北斗晶と佐々木健介夫妻(C)日刊ゲンダイ

 乳房再建手術は2013年、乳房を膨らませるエキスパンダーを入れるタイミングや手法を問わず、保険適用になった。しかし、それによってトラブルも急増しているという。乳房再建手術の国内第一人者である「ブレストサージャリークリニック」(東京・港区)の岩平佳子院長に聞いた。

 乳房再建手術が保険適用になる2年前までは、乳房再建を専門に行っている形成外科医は、全国にわずかしかいなかった。ところが、2013年以降、積極的におこなう医師が増えた。

「乳房再建手術で非常に重要なことのひとつは、患者さんがどのような乳房を求めているかを的確に拾い上げ、患者さんの希望に応じた乳房を再建することです。新しく始めた医師の多くは、技術的にも、経験的にも、その考えが圧倒的に足りません」

 エキスパンダーは、大きさや形が違うものが42種類。乳房が膨らんでから入れるシリコーンは、大きさ、形、軟らかさが違うものが212種類もある。

 患者にとってベストのものを選ぶには、やはり経験がモノをいうが、エキスパンダーによって、合うシリコーンはだいたい決まってくる。

「ところが、この大前提を知らない医師がほとんど。どのエキスパンダーを選ぶかをおろそかにできないということなのに、慎重さがないのです」

 乳房は走ったら揺れ、ブラジャーを着ければ盛り上がる。水着のような押さえつけるものでは、乳房が押さえられたような形になる。しかし、乳房再建手術で作られた乳房は、走っても、ブラジャーを着けても、水着を着ても、形が変わらない。だから、「ブラジャーを着けて洋服を着た時に美しく見える胸にしたい」という患者と、「水泳が趣味。水着で不自然にならない乳房がいい」という患者では、乳房再建手術でシリコーンを入れる位置、大きさなどすべて異なってくる。

 某有名大学教授の乳房再建手術を受け、その後、岩平院長のもとを訪れた患者の乳房は、再建手術をした側がもともとの乳房と比べて異様に大きかった。

 某大学病院で乳房再建手術を受けた患者は、明らかに乳房の左右の位置が違っていた。再建手術をした側が、かなり上になっていた。こういった事例は、保険適応以降、珍しくないほど増えているという。

「乳房再建手術は、たとえばもとの乳房が小さければ、乳がんでない方の胸も豊胸手術をし、左右の乳房を大きく、美しく整えることも可能です。乳がんで乳房全摘したのを機に、胸を大きくする人もいます。一方で、本人の希望がなくても、左右の大きさを整えるために、乳房再建手術をしない側の乳房も大きくしたり、小さくしたりした方がいいこともあります」

 つまり、「エキスパンダーを入れて胸を膨らませ、シリコーンを入れれば終わり」という単純なことではないのだ。乳房再建手術を受けるなら、その意味をしっかり認識している医師選びが不可欠。

「この医師はおかしいと少しでも思ったら、たいていその勘は当たっています。すぐに医師を代えることを勧めます」