「ディオバン事件」からはや2年、忘れてしまった方が多いかもしれません。「ディオバン」という血圧を下げる薬の効果を検討するに当たり、日本人を対象とした研究データの捏造が明らかになった事件です。
この事件発覚の発端のひとつは、データのばらつきを示す「標準偏差」の値の異常な大きさが指摘されたことでした。
問題となったのは、研究に参加した患者のカリウムの値です。ディオバンを飲むことになったグループの平均値は4.5で、標準偏差が2.2となっていますが、標準偏差の概念がわかっていれば、この値が異常であることはすぐにピンときます。
この異常値が論文の再点検につながり、いろいろな問題があぶり出されるきっかけになったのです。
カリウムの値は3.5から5の間に、ほとんどの人が入ります。前回指摘したように、標準偏差の2倍を超える人はあまりいませんが、1倍を超える人は20%くらいいることがわかっています。
医療数字のカラクリ