医療数字のカラクリ

標準偏差の異常が発端だったディオバン事件

「ディオバン事件」からはや2年、忘れてしまった方が多いかもしれません。「ディオバン」という血圧を下げる薬の効果を検討するに当たり、日本人を対象とした研究データの捏造が明らかになった事件です。

 この事件発覚の発端のひとつは、データのばらつきを示す「標準偏差」の値の異常な大きさが指摘されたことでした。

 問題となったのは、研究に参加した患者のカリウムの値です。ディオバンを飲むことになったグループの平均値は4.5で、標準偏差が2.2となっていますが、標準偏差の概念がわかっていれば、この値が異常であることはすぐにピンときます。

 この異常値が論文の再点検につながり、いろいろな問題があぶり出されるきっかけになったのです。

 カリウムの値は3.5から5の間に、ほとんどの人が入ります。前回指摘したように、標準偏差の2倍を超える人はあまりいませんが、1倍を超える人は20%くらいいることがわかっています。

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名郷直樹

「CMECジャーナルクラブ」編集長。東大薬学部非常勤講師。東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員、臨床研究適正評価教育機構理事)自治医科大卒。名古屋第二赤十字病院にて研修後、作手村国民健康保険診療所にてへき地診療所医療に携わる。95年同診療所所長。05年東京北社会保険病院臨床研修センター長。「『健康第一』は間違っている」などの著書がある。