独白 愉快な“病人”たち

タレント 麻木久仁子(52)さん 乳がん ㊦

麻木久仁子さん
麻木久仁子さん(C)日刊ゲンダイ

 4年前、脳梗塞に。その後、婦人科系を含めた定期健診で思ってもいなかったことを医師から告げられた。

 乳がんの検査で呼び出され、紹介先が「国立がん研究センター」だというので私も驚きました。自覚症状はゼロ。痛みもしこりもありませんでした。でも、それなりの確証をもっていなければ先生もがんセンターを紹介しないはず。紹介状を書いていただきながら、「ああ、私はがんなんだな」と思いました。

 先生も70~80%は確信があったんじゃないでしょうか。でも、「がんなんですか?」と問うと、「左は乳腺症かもしれないけど、右は……」と。確定診断が出るまでは、「がん」と言い切ることはありませんでした。

 国立がん研究センターで調べると、左右両方の乳房にがんがありました。まだ初期で、乳腺の中にある状態。これが破裂すると「浸潤」と言って乳腺に根を生やし、乳房にしこりをつくるのですが、その前段階でした。

 治療方針は、がんの切除手術と放射線治療とホルモン療法。5年後の生存率も95%以上ですから早期発見で本当によかったと思いました。

 手術は乳輪に沿って3~4センチ切り、がんを切除。手術自体は3~4時間、入院も2泊。娘を産んだ時の帝王切開のほうが痛かったですよ。術後は傷の痛みぐらいで済みました。

「病変の部位が近いため、乳頭(乳首)が壊死する可能性もある」と言われ、「別に乳頭を失っても大丈夫です」と執刀医には伝えましたが、丁寧に切除し、縫合してくださったおかげで左右両方健在です。切除した分、乳房はちょっと形が悪くなり、乳輪も少し小さくなりましたが、初めて見た人には違和感はないと思います。まあ、どこで見せるんだって話ですが。

 その後は放射線治療が左右で60回照射。これで見えないがん因子をやっつけます。平日朝イチで、1カ月半くらい通いました。感覚的には超強い日焼けと言いましょうか。最初はやけどのように表面がジュクジュクしたりしますが、特に痛みはありませんでした。放射線治療も昔と違い、必要な部分だけピンポイントで照射してくれて、ダメージは最小限で済みます。ただ、放射線のせいで汗腺がダメになるので、サウナに入っても、照射した部分からは汗が出ない。皮膚表面も乾燥しやすくなったので、クリームを塗るようにしています。

 ホルモン療法は毎朝薬を飲むだけ。女性ホルモンの活性化が乳がんには良くないので、ホルモンの働きを薬で抑えます。副作用で、更年期障害のような症状が出る可能性もあり、また、卵巣がん予防には正反対で女性ホルモンが必要。あちらが立てばこちらが立たずで。私は、左右両方、同時多発的に乳がんができたので、乳がん対策が優先です。

 私の場合は、多少のホットフラッシュが出たくらいで深刻な後遺症もなく済みましたが、そうでない方もたくさんいます。

 ただ万人に言えることは、「検査は必要だ」ということ。胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頚がん、乳がんの5つのがんは、検査で早期発見しやすい。ダテに集団検診の項目に入っているわけじゃない。ちゃんと理由があるんですよね。

 乳がんはダンナが触ってわかるもんじゃありません。しこりができる前に検査で発見できれば、手術も小さくて済みます。マンモグラフィーは痛いからと避ける女性もいるけれど、今はそんなに痛くないし、検査で青タンができるわけじゃありません。テーブルに足をぶつけて青タンをつくったほうがよっぽど痛いもの。

 読者のみなさんには、とにかく奥さんを検査に行かせるよう言ってほしいですね。

▽あさぎ・くにこ 1962年東京都生まれ。90年代から「マジカル頭脳パワー!!」「ヒントでピント」などクイズ番組での高い正解率とバラエティー番組でのキレのあるコメントで、知性派タレントとして活躍。書評サイト「HONZ」などの連載でも活躍。