独白 愉快な“病人”たち

タレント 麻木久仁子さん(51) 乳がん ㊤

麻木久仁子さん
麻木久仁子さん(C)日刊ゲンダイ

 母と20歳になる娘を養うシングルマザーで、私が我が家の大黒柱なものですから、40歳過ぎから健康診断は毎年受診していました。

中高年で問題になるものは全部合格。高脂血症などの問題もなく、「きれいな頚動脈ですね」なんて言われていて健康には自信があり
ました。

 ところが4年前の12月、急に右手と右足だけに長時間正座をした時のようなしびれがきたんです。「あれっ?」と思いましたが、20~30秒すると治まった。それからまた時間が経って、突然しびれがきました。

 右半身だけ、というのが怪しい。「これは脳だな」と直感し、すぐ脳外科の予約の電話を入れました。診察を受けたのが、その4~5日後だったと思います。その間、ブルブルッと同じしびれが何回かやってきた。クイズ番組の収録中、解答を書いている時にも“例のしびれ”がやってきたこともありました。でも、20~30秒待てば治まる。

 しびれの回数が増えるでもなく、しびれている時間が長くなることもないのですが、何か悪い方に進行したらイヤだなと不安でした。病院で脳のMRIを撮ってもらうと、やはり首の付け根の上の脳の真ん中に小さな梗塞がありました。といっても、“できたてホヤホヤ”で、梗塞として固まる前。軟らかくて腫れているので、時々神経に触れて、しびれを起こしていたのだそうです。

 時は48歳で、脳梗塞になるのは若い方。先生たちにも「若い」って言われて、ある意味うれしかったかな。

 でも、今まで健診では何もなかったのに、逆にミステリーです。医師に聞いても、過去に巻き戻してみるわけではないからわからないと。医学的に因果関係はないけれど、何か突発的なストレスでホルモンバランスが崩れて血栓ができたということなんじゃないかということでした。

 治療は、血液をサラサラにするために「バイアスピリン」という薬を服用することと、水分補給に気を付けること、あとはストレスをためないようにするくらい。手術などの外科的な治療はしていません。

 原因不明なのも何ですし、梗塞を作る何かほかの病気があるのではないかと、あらゆる検査をしました。頭にたくさん電極をつけて調べる検査や、24時間心電図をつけたり、「なんとか症候群」みたいな聞いたことのない病気まで、3カ月ほどかけて調べまくりましたよ。

 結局、何も見つからず、先生からも太鼓判を押されて自信をもちました。

 翌年、年に1回の定期健診を脳梗塞でお世話になった大学病院に替え、新たなデータベースを作るつもりで婦人科系も検査項目に加えました。

 もともと乳がんって胸の大きな人のなる病気っていうイメージで、胸の小さい私は検査不要だと思って、普段は検査に加えていなかったんですよ。

 でもそれは全くの嘘。乳腺があれば誰でも可能性があり、男性でも乳がんになるそうです。

 それで指定された広尾のクリニックで乳がんのマンモグラフィー検査を受けました。結果はほかの検査とまとめて大学病院でもらうという流れです。

 ところが、その広尾の先生から呼ばれて、再検査の案内。しかも紹介先が、「国立がん研究センター」だというのです。(次回につづく)

▽あさぎ・くにこ 1962年東京都生まれ。90年代から「マジカル頭脳パワー!!」「ヒントでピント」などクイズ番組での高い正解率とバラエティー番組でのキレのあるコメントで、知性派タレントとして活躍。書評サイト「HONZ」などの連載でも活躍。