役に立つオモシロ医学論文

寝不足は風邪を招く!?

(C)日刊ゲンダイ

 常識的には睡眠をしっかりとったほうが風邪などの感染症にかかりにくいと思うでしょう。

 では、どれくらいの睡眠時間で、どれくらい風邪にかかりやすくなるのでしょうか。過去に睡眠状況と風邪の関連を検討した研究報告はありましたが、睡眠時間は被験者の自己申告に基づくなど、データの信頼性があまり高くはありませんでした。

 そこで、活動量計を用いて被験者の睡眠時間を客観的に記録。睡眠時間と風邪の発症を検討した研究が、アメリカ睡眠医学会が発行している「スリープ」という専門誌の2015年9月1日号に掲載されました。

 この研究は18~55歳の健常成人164人(平均29.9歳)が対象となりました。睡眠日誌とアクティグラフと呼ばれる活動量測定のための医療機器を用いて、被験者を7日間にわたり持続的にモニターし、睡眠状況を評価。その後、風邪の原因ウイルスのひとつであるライノウイルスを点鼻剤として投与し、風邪の発症状況を5日間にわたり観察しました。

 その結果、1日に7時間を超える睡眠時間を有していた人に比べ、5時間未満では4.5倍、5~6時間では4.25倍、風邪にかかるリスクが高かったと報告されています。6時間を超える睡眠時間では明確な差はありませんでした。

 この研究では被験者を睡眠時間が長い人、短い人にランダム(無作為)に振り分けているわけではないので、睡眠時間が短い人に、もともと風邪にかかりやすい人が多かったという可能性はあります。しかしながら、睡眠不足にはさまざまな有害報告もあり、できれば食事などに気をつけるのと同じように睡眠不足にも注意したいところです。

▽あおしま・しゅういち 2004年、城西大薬学部卒。薬剤師。保険薬局管理薬剤師、学術担当を経て12年から医療法人「徳仁会 中野病院」に勤務。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。