天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓のトラブルを引き起こす薬もある

順天堂大医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ


 現在、定期的に通院している病院の神経内科から、向精神薬などの薬を何種類か処方してもらっています。食事や運動をすると、動悸、胸痛、心臓の不快感といった症状が表れるのですが、検査を受けてもデータには異常が出ません。なんとかならないでしょうか?(46歳・男性)


 神経内科や精神科で処方される向精神薬の中には、心臓トラブルを招く原因になるものがあります。神経伝達物質や血管作動性物質に作用するタイプの薬が、患者さんによっては動悸や胸痛などの症状を引き起こしてしまうのです。

 そもそも動悸などの心臓の自覚症状は、病気がなくても自律神経の問題で表れるケースがあります。向精神薬は自律神経にも作用するので、薬が影響している可能性は十分に考えられます。

 こうした自覚症状は、もともと心臓に病気がない状態で、薬によってつくられている病態なわけですから、検査を受けてもはっきりしたデータは出てきません。質問をいただいた男性は、通院している神経内科から処方されている薬による副作用として、心臓に自覚症状が表れている可能性があります。複数の薬の飲み合わせによって、問題が引き起こされていることも考えられます。まずは、担当医に薬に問題がないかどうかを見直してもらってください。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。