独白 愉快な“病人”たち

元俳優 山本陽一さん(45) 劇症心筋炎 ㊦

山本陽一さん(C)日刊ゲンダイ

 退院後は、食事制限と日課は散歩。暴飲暴食生活を改め、たばこも酒もやめました。でも、仕事復帰までの1年間、時間や家族といった僕の宝物が、指の間から砂のようにサーッと崩れ落ちていくように感じました。入院費は医療保険で何とかなりましたが、1年は無職。不甲斐ない気持ちでいっぱいでしたね。家計を支えてくれた妻には感謝しています。1年後の舞台復帰では、楽日の挨拶でさまざまなことを思い出し、涙が出ちゃいましたね。

 心臓を病んでから特徴的なのは、塩気のある物を食べるとひどく喉が渇くようになったこと。つまみ類はダメ。刺し身も醤油をつけずに食べます。どうしてもラーメンを食べたい時は、食後に水を1リットル飲む。今も常に1リットルのペットボトルを持ち歩いています。

 あれから3年経ち、離婚をきっかけに芸能界を卒業しました。

 建設業を営む知り合いのところで、解体作業や土木の肉体労働に1年従事し、今は実家に戻り、家業の金属加工会社を継いでいます。アクションやむちゃぶりに応えられる体じゃないし、病気によって「ここで生まれ変わろう」と吹っ切れた。

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