徹底解説 乳がんのなぜ?

「早期だから温存」「進行しているから全摘」ではない

右乳房の全摘出手術を受けた北斗晶(C)日刊ゲンダイ

 抗がん剤の開発は目覚ましく、多くの新しい抗がん剤が登場している。的確に効果を発揮する抗がん剤を選ぶのに術前化学療法がベターなのだ。

 また、がん細胞の増殖にかかわる「HER2タンパク」を持つ乳がん細胞には、それを狙い撃ちにする分子標的薬が保険適用になっている。事前にHER2タンパクの有無を調べ、該当患者には分子標的薬を用いる。

 ホルモン療法は、女性ホルモンのエストロゲンによって増殖するタイプの乳がん(ホルモン受容体陽性乳がん)に行う。抗がん剤を用いる場合は、抗がん剤後にホルモン療法となる。治療期間は徐々に延び、今は5~10年とされている。

「抗がん剤、ホルモン療法をどうするかについても、どう選ぶかは、温存・全摘の選択と同様に、患者さんのがんの状態、価値観で違います」

 土井医師がある講演会で、「抗がん剤、ホルモン療法を加えても、再発率、生存率に大きな差が出ない場合の60代女性」を例に、参加者にどうするか聞いたところ、「それでも抗がん剤、ホルモン療法を受ける。夫をまずみとりたいから」という回答が多数だった。

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