今押さえておきたいがん治療

「免疫療法」は本当に勝てるのか

 がん細胞が増えると、司令官の働きがスムーズにいかず、がん細胞がますます増えてしまう。そこで患者の体内から樹状細胞を取り出し、培養後、体内に戻す。すると、司令官が増えることになり、リンパ球が的確にがん細胞を攻撃できるようになる……と考えられている。

 ここできちんと押さえるべきは、これらの免疫療法はまだ十分な科学的根拠(エビデンス)をもって証明されているわけではないということだ。

 さらに最近は、免疫療法について、別の見方が出てきた。日本医科大学付属病院がん診療センター・久保田馨教授が言う。

「免疫療法は、免疫細胞の働きを高める研究ばかりが行われてきました。しかし、がん細胞は免疫細胞の働きを抑えられる、つまり“ブレーキ”をかけられるものだけが増殖する。免疫細胞の働きにブレーキをかける力をがん細胞が持っている限り、免疫細胞の働きをいくら高めても、その都度ブレーキをかけられるので、がんを死滅させられない。従来の免疫療法の考え方そのものが、間違えているという見方が出てきたのです」

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