介護の現場

夫の母親、妻の両親と介護同居

「わが家は一時期、老人ホームのような状態でしたね」

 こう語るのは埼玉県大宮在住の、食品販売業・楠木明男さん(仮名、56歳)だ。

 話は10年ほど前にさかのぼる。父が病死したことから、群馬県高崎市の実家で一人暮らしをしていた母親を引き取った。楠木さんは一人っ子である。

 楠木夫婦には、結婚前の長男が1人。4人家族になったが、数年前から母親にボケの症状が始まっていた。もとより体力が弱く耳も遠くなり、宅配便の配達員を押し売りと勘違いし、玄関を開けなかったこともあった。

 それから1年ほどして、今度は妻の両親が同居を希望してきた。

「東京出身の妻は一人娘で、年老いた両親の面倒を見る人がいない。私の母親も妻に面倒を見てもらっている関係で、同居を断ることもできません。それでわが家に、80歳を過ぎた老人3人が、同居することになったわけです」(楠木さん)

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