介護の現場

夫の母親、妻の両親と介護同居

 厄介なことがもうひとつあった。病院までの送迎である。それまでワンボックスカーを所有していたが、車椅子利用者を乗せるには、とても面倒だった。介護用専門の車を購入しようと、各メーカーに資料を請求したところ、40万~50万円前後の中古があった。

「それでも新車にしようかと少し迷いましたが、結局、スロープが付いて、車椅子ごと乗せられる100万円に近い、5人乗り用の中古の車を選択しました」

 そのうち、老人特有の排泄問題が起こり、楠木さんの仕事を手伝っていた妻は、老人3人の専属介護ヘルパーになった。

 寝たきりになった親のおむつを取り換えているときに、主人の親がトイレの中で叫んでいる。

 2年前、3人のうち、楠木さんの母親が他界。その後、相次ぐように妻の両親も亡くなった。

「不謹慎な言葉ですが介護の苦労を思うと、実は亡くなってホッとしたところがあります。現在は自宅で夫婦2人の生活。今度は夫婦のどちらかが介護され、残った方が介護する番です。いまは、嵐の前の静けさという感じでしょうか」

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