介護の現場

遠くの子供より近くの他人

 特養老人ホームの入居代は月額7万円弱。古橋さんは余生を静かに送っていたが、ほどなく問題が起きる。

 2人の子どもたちが入れ代わり立ち代わり訪問するようになった。母親の安否を気遣っていたわけではなく、ただ小遣いをせびりに来ていたという。

 古橋さんには資産として夫が残してくれた一戸建て住宅と、5000万円に近い隠し預金があった。子どもたちは「生活費が足りない、2万円くれ」「子どもの結婚式で金がかかる」「店の経営がうまくいかない」などと理由をつけては、金をせびってきた。

「古橋さんのこんな親子関係を再三目撃していた老人ホームの施設長が気の毒に思い、区役所に相談したところ『成年後見』の制度を教えてくれたのです。古橋さんは少し認知症も進んでいました」(畠山さん)

 2000年に導入された「成年後見制度」とは、ざっとこんなシステムだ。

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