「半年に1回といっても旅費は大変。それで両親を東京に呼び寄せて同居を考えました」
だが、両親のうち、とくに母親が「東京なんかに住みたくない。友達と別れるのがいやだ」と、首を縦に振らない。
83歳になって、父親のほうが少しボケの症状が始まった。湯を沸かしているときに火を止め忘れ、ヤカンを3個もダメにした。火事でも出されたら大変である。日下さんは、もう強引に両親を東京に連れて来ようと決断した。だが、きょうだい3人の中で、両親の面倒を誰が見るかで悩んでしまう。
長女夫婦は共働き。住居が狭く、両親が暮らせるスペースがない。次女はもとより両親と折り合いが悪かった。
長男の日下さんが適任者だったが、虚弱体質の妻が渋った。
日下さんは、介護専門誌などから情報を得て、両親を埼玉県下の旧「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」に入居させた。
介護の現場