徹底解説 乳がんのなぜ?

「宣告」されたとき 男性が振舞うべき5つのポイント

北斗晶を支える夫の佐々木健介
北斗晶を支える夫の佐々木健介(C)日刊ゲンダイ

 妻や恋人が乳がんを宣告され、ショックを受けているとき、男性はどう振る舞えばよいのだろう? がん患者とそのパートナーの心の問題を長年研究してきた「国立がん研究センター」(東京・築地)がん対策情報センター・高橋都がんサバイバーシップ支援研究部長に聞いた。

「最低、5つのポイントを押さえておきましょう。1つは相手にさりげなく寄り添うことです。心遣いや優しさを具体的な行動で表しましょう。例えば、荷物を持つ、皿洗いをする、洗濯物を畳むなど、ちょっとした心遣いで、共に寄り添い歩んで行くんだという気持ちをみせることが大切です」

 2つ目は常に2人で一緒に考えること。“妻は乳がん宣告で何も考えられなくなっているだろう”と治療法や家庭のことまで独断専行しようとする男性がたまにいるが、やめた方がいい。

「そもそも、病気後に直面する問題への対応には、いろいろな選択肢があります。医師などから正確な情報を得て、妻と一緒に考えてほしいのです」

 優しさから“君の好きにしていいよ”という人もいるが、これも妻からすれば突き放されたと思われかねず感心しない。

 3つ目は察するのではなく聞くこと。

「普段は相手の立場に立つことや気持ちを察することは美徳とされますが、大きな病気は2人にとって新たな局面。想像だけで理解するのは難しいので、相手の気持ちや希望をざっくばらんに聞く方が誤解を生まないことを覚えておきましょう」
“周囲に負担をかけて申し訳ない”という気持ちから、自分の希望を言い出せない女性は少なくない。男性は常に「遠慮は必要ない」と伝え、「今どんな心配事があるのか」「何をしてほしいのか」を聞くことが大切だ。

 4つ目は愛情表現だ。

「当然のことですが“大丈夫”“君が大切”“愛している”と口に出して表現することは心細くなっている患者さんを励ますことにつながります。積極的に口にしましょう。言いづらかったら、手紙やメールで伝えるのもいいかもしれません」

 言葉で伝えづらければ黙って手を握ったり、静かに抱きしめるのも手だ。

 5つ目は自分の体調も大事にすること。人に優しくするには自分自身の心身が健康でなければならない。男性は己の心身の不調に目をつむってはならない。

「患者さんの夫や恋人は、本来、自分自身が支援が必要な立場にありながら、患者の主な支援者としての役割を担います。適度に息抜きすることを後ろめたく思わなくてよいと思います」

 実際、ある調査では、乳腺外来を受診した女性乳がん患者の夫の約9割が妻の病気と関連した心身不調を訴えたという。

「不調としてもっとも多かったのが“将来への漠然とした不安”(54%)や“気分の落ち込み”(39%)。“不眠”“イライラ感”“肩こり”“仕事の能率低下”などが続きました」

 深刻なのは心身不調や心配事があっても3分の1の男性が誰にも相談していなかったことだ。

「男性は健康問題を他人に相談することに抵抗感を持つ人が多い。妻や恋人の乳がんについて悩んでも、“自分で乗り越えるべき問題”“周囲から同情されたくない”と考えがちです。でも、親しい友人などに、話を聞いてもらうだけで楽になることもあります。問題を抱え込まず自分のコンディションを整えることが、乳がんで苦しむパートナーの支えにつながることをわかっていただきたいのです」

 あなたは大丈夫?