医療用語基礎知識

【がんの年齢調整罹患率】先進国は頭打ち、減少傾向へ

 その数字を見ると、様子がかなり違ってきます。1975年が1000人中2・4人、1985年が2・7人、2010年が3・3人でした。確かに増えているのですが、約4倍というような大袈裟な増え方ではないことがわかります。

 そもそも、それ以前に1975年と2010年を比較すること自体にかなり無理があります。診断技術に差がありすぎますし、上皮内がんを含めるかどうかでも大きく変わってくるからです。現在のがん登録では、上皮内がんも、がんとして集計しているのです。それが年齢調整罹患率を押し上げているのは確かです。

 なによりも昔の統計自体、ほとんどあてになりません。いまのがん登録制度が本格的に整備され始めたのは、ようやく今世紀に入ってから。1975年、あるいは1985年になっても、そのような制度はまったく存在せず、ときどき行われる全国調査で、大ざっぱな数字を把握していたに過ぎないからです。

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やなぎひさし

やなぎひさし

国立大学理工学部卒。医療機器メーカーの勤務を経てフリーへ。医療コンサルタントとして、主に医療IT企業のマーケティング支援を行っている。中国の医療事情に詳しい。