医療用語基礎知識

【X線検査】間接撮影の被爆量は直接の10倍

 X線は物体を透過します。ただし物の材質や密度によって、透過のしやすさが異なります。肺のように空気を大量に含んだ臓器では透過しやすく、骨など硬い組織では透過しにくくなります。

 透過したX線をフィルム上に焼き付けることによって、X線写真が得られます。肺の部分はフィルムがより強く感光され、骨の部分はあまり感光されません。現像すると、肺は黒く、骨は白く、そして(もしあるとすれば)病巣が中間の濃さで映し出されるのです。

 現在、使われている撮影方法は3通りあります。まずは「直接撮影」といって、透過X線を直接フィルムに焼き付ける方法です。昔から病院などで使われてきました。フィルムが大きく(35・6×35・6センチ)、しかも結構重い(1枚当たり30~40グラム)ため、保管や持ち運びが面倒です。しかし、高い解像度と、実物大の像が得られるのが大きなメリットです。

 これに対し、「間接撮影」と呼ばれる方法があります。透過したX線をいったん蛍光板と呼ばれるスクリーンに当てて紫外線像に変換し、それをフィルムに焼き付けます。使われるフィルムは10×10センチとかなりコンパクトになり、経済的です。フィルムがロール状になっていて自動で巻き上げができ、フィルムセットに要する手間が省けるといった利点もあります。さらにシャウカステン(X線写真を診断するための照明板)に、一度に何枚分もセットできるため、診断効率も上がります。効率が重視される集団健診で、昔から使われ続けてきた方法です。

 ただフィルムが小さいので、直接撮影と比べて病巣を見落としやすいといわれています。理論上は、解像度にほとんど差はないといわれていますが、写真でチェックするのは生身の医師です。フィルムが小さいよりは大きいほうがわかりやすいのは、いうまでもありません。しかも健診写真の診断は、昔から主に新米医師のアルバイトとして行われてきたという経緯もあります。そのため健診で異常が見つかったときには、すでに手遅れの場合が多いという医者もいるほどです。

 被曝量の問題もあります。実は間接撮影の被曝量は、直接撮影の10倍にも達するのです。“そのくらいは大丈夫だ”といわれていますが、健診は毎年受けるのですから、被曝は少ないに越したことはありません。

 今世紀に入ってからは、「デジタルX線カメラ」が急速に普及しています。被曝量は間接撮影よりも少なく、解像度は直接撮影と同等といわれています。コンピューターの画面上で拡大・縮小できるなど、デジタルならではのメリットもあります。今年の健診で、どの撮影方法が使われているか、技師さんに質問してみるといいでしょう。
(医療ジャーナリスト・やなぎひさし)

やなぎひさし

やなぎひさし

国立大学理工学部卒。医療機器メーカーの勤務を経てフリーへ。医療コンサルタントとして、主に医療IT企業のマーケティング支援を行っている。中国の医療事情に詳しい。