医療用語基礎知識

【心電図】病気のサインを見逃すことも

 健診や診察で使われている一般的な心電計は、「12誘導心電計」、略して「12誘導」と呼ばれています。つまり12種類の電流を記録するのです。ただし、使う電極は10本です。まず心臓を囲むようにして、胸の6カ所に吸盤で電極を取り付けます。次に両手首、両足首の4カ所に、大きな洗濯バサミの形をした電極を装着します。その4つの電極で、6種類の電流波形を記録します。胸と合わせて合計12種類。だから12誘導というわけです。

 心臓に異常があると、独特の波形が生じたり、波形が乱れたりします。そのパターンから、病気の有無と、病気の種類が分かります。

 ただ、健診の測定時間は1分ほどに過ぎません。しかも横になった安静状態です。ところが不整脈や狭心症は、運動時に生じることが多いため、肝心の病気のサインを見逃すこともしばしば。というよりも、健診で重大な心臓病が見つかることは、めったにないといいます。また、健診時の心電図が正常だからといって明日、心筋梗塞にならないという保証はどこにもありません。心筋梗塞は血液が固まって血栓となり、それが血管をふさいでしまう病気。心電計で血栓のできやすさまで測定するのは難しいのです。そのため「健診の心電図測定は無意味」と言い切る医師もいます。

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やなぎひさし

やなぎひさし

国立大学理工学部卒。医療機器メーカーの勤務を経てフリーへ。医療コンサルタントとして、主に医療IT企業のマーケティング支援を行っている。中国の医療事情に詳しい。