医療用語基礎知識

【血液検査】赤血球が少なければ貧血、多ければ血管が詰まる

 検査の定番といえば血液検査です。肘の内側の静脈から、血液を抜かれた経験のない人は、まずおられないでしょう。

 なかには注射器にあふれる血を見て、気分を悪くする人もいます。かなり大量に採血されているイメージがありますが、実際には10㏄ほど、大さじ1杯分に過ぎません。

 その血液検査は、検査の仕方により、大きく生化学検査と血算検査に分かれています。

 生化学検査は、血中に溶けている糖、脂質、タンパク質などの量を、化学反応を利用して計測する検査です。血糖値やコレステロールなどは、生化学検査に属します。

 一方、血算検査は赤血球、白血球、血小板などの数を調べる検査です。健診結果を見てください。必ずそれらの数字が印刷されています。このうち、赤血球数とヘモグロビン量は、主に貧血を調べる項目です。

 赤血球数は、血液1マイクロリットル(1㏄の1000分の1)中に含まれる個数で表します。基準値は、男性が400万~539万個、女性が360万~489万個です。赤血球は、体のすみずみに酸素を運搬する役割を担っています。それが基準値よりも少なければ、貧血と呼ばれます。

 しかし基準値よりも多いこともあります。赤血球が多い分、血が濃いわけです。その場合は多血(症)と呼ばれます。多血は男性に多い傾向にあります。とくにヘビースモーカーは、多血になりやすいことが知られています。ただちに問題というわけではありませんが、血が濃いだけに、血管が詰まりやすくなるといわれています。つまり、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすいのです。

 献血で血を抜く人がいます。また、瀉血といって、文字どおり血を抜く治療法もあります。しかし効果は一時的。多血の改善には、生活習慣を改めるなど、抜本的な対策が必要です。

 ヘモグロビンは、赤血球に含まれているタンパク質です。これこそが、酸素運搬の主役です。肺で吸収された酸素は、ヘモグロビンと結合して、全身に運ばれていくのです。ヘモグロビン量は、血液1デシリットル(1デシリットルは100㏄)中の重さで表します。基準値は、男性で13・0~16・6グラム、女性で11・4~14・6グラムです。

 ヘモグロビンには、鉄原子が含まれています。逆にからだの鉄分が不足すると、ヘモグロビンの生産が減ってしまうため、次第に貧血状態になっていきます。これが鉄(欠乏)性貧血です。ヘモグロビン量が基準値よりも低い人の大半が、これに該当します。

 若い女性などは、生理の関係から鉄性貧血になりやすいといわれています。とくに治療は必要ないのですが、重症者には鉄補給のためのサプリメントなどを処方されることもあります。
(医療ジャーナリスト・やなぎひさし)

やなぎひさし

やなぎひさし

国立大学理工学部卒。医療機器メーカーの勤務を経てフリーへ。医療コンサルタントとして、主に医療IT企業のマーケティング支援を行っている。中国の医療事情に詳しい。