医療数字のカラクリ

医療数字の「平均」半分の人が治るのは・・・

「平均」は最もありふれた指標ですが、実際に利用するとなるとなかなか難しい指標です。

 例えば、「かぜは平均4日で治る」という情報があったとしましょう。

 多くの人は「平均というのはだいたい真ん中なんだから、かぜが平均4日で治るというのであれば、半分の人が4日で治るということではないか」と思うのではないでしょうか。

 しかしこれは間違いです。ある集団の平均が真ん中になるためには、平均を中心に高い方も低い方も左右対称に広がっている必要があります。ところが、風邪が治る期間は平均を中心に対称というわけではありません。「かぜの治る期間の平均が4日」だからといって、半分の人が4日間でかぜが治るわけではないのです。

 データの分布、ばらつきが左右対称でなければ、そのバラつきの形によって、平均の意味が変わってしまいます。つまり、平均値だけでは自分が全体のどのあたりに入るかを推測することは困難なのです。逆に言えば、データ全体のばらつきがわからないことには、平均の意味もよくわからないのです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。