「平均」は最もありふれた指標ですが、実際に利用するとなるとなかなか難しい指標です。
例えば、「かぜは平均4日で治る」という情報があったとしましょう。
多くの人は「平均というのはだいたい真ん中なんだから、かぜが平均4日で治るというのであれば、半分の人が4日で治るということではないか」と思うのではないでしょうか。
しかしこれは間違いです。ある集団の平均が真ん中になるためには、平均を中心に高い方も低い方も左右対称に広がっている必要があります。ところが、風邪が治る期間は平均を中心に対称というわけではありません。「かぜの治る期間の平均が4日」だからといって、半分の人が4日間でかぜが治るわけではないのです。
データの分布、ばらつきが左右対称でなければ、そのバラつきの形によって、平均の意味が変わってしまいます。つまり、平均値だけでは自分が全体のどのあたりに入るかを推測することは困難なのです。逆に言えば、データ全体のばらつきがわからないことには、平均の意味もよくわからないのです。
では、自分が全体のどのあたりに入るのか、推測しやすい指標はないのでしょうか? あります。それが「中央値」です。
これはデータを小さいものから順番に並べた場合、真ん中にあたるデータの値です。中央値はデータのばらつきに関係ありませんから、「かぜの治癒期間の中央値が3日」というのであれば、50%の人が3日以内に治ると解釈していいわけです。
これからデータを見るときには、平均値だけではなく、中央値にも注目して見てください。いままでとは違った面が見えてくるはずです。
医療数字のカラクリ