ここ半年にわたって、糖尿病、寿命についての数字を紹介してきました。今回からは新シリーズです。ただ新シリーズといっても結局は似たようなものになってしまうかもしれません。そうならないように注意しながら、今回はかぜを例に医療にかかわる数字のカラクリを見ていきましょう。
健康な成人のかぜについて、以下のように書かれていたとしましょう。どれが一番興味を引くでしょうか。
●かぜは平均4日で治る
●かぜの50%は3日で治る
●かぜの25%は2週間以上治らない
●かぜの10%は3週間以上治らない
いずれも医学的には間違った言い方ではありませんが、皆さんに一番なじみが深いのは「平均4日で治る」ではないでしょうか。問題はこの「平均」という意味です。
私たちは毎日、天気予報で平均気温という言葉を耳にします。それをもとに、医療における平均を考えてみましょう。
例えば1年間で平均気温通りの日がどれくらいあるか、考えてみましょう。多くは1度高いとか2度高いとか、あるいは逆に1度低いとか2度低いというように、平均気温そのままという日は案外ないことに気付かれるでしょう。
そうなのです。平均値というのは、その値が多いということではなく、それより高い日や低い日がたくさんある中での話です。だから、
「かぜが平均4日で治る」と言っても、個々の患者においては、「私は2日で治った」「いや、私は5日かかった」というふうに、全然平均でないというのが現実なのです。
ただ、そういう人がたくさん集まると平均4日で治るという数字が導き出されるわけです。これは計算上の数字であって、実際多くの人が4日で治っているわけではないのです。
医療数字のカラクリ