医療数字のカラクリ

運動や食事よりもやりがいのある治療法がある

 これをもう少し具体的に説明してみましょう。たとえば食事、運動を頑張って、薬もしっかり飲んで、HbA1cが8%から7%に下がったとしましょう。しかし合併症予防効果で考えると、HbA1cが8%のままでも、禁煙に成功すれば、HbA1cを7%まで下げる治療より大きな合併症予防効果があるということです。もう少し平たく言えば、HbA1c7%の喫煙者より、HbA1c8%の非喫煙者の方が、合併症が少ないのです。

 糖尿病の食事や運動の治療と同様、禁煙はなかなか困難なもののひとつですが、食事、運動以上に頑張りがいがある治療です。ぜひ挑戦してみてください。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。