医療数字のカラクリ

糖尿病の薬で寿命が延びないワケ

 血糖が下がりすぎるとアドレナリンという血糖を上げるホルモンが放出されて脈拍が増えますが、脈拍の増加は心臓に負担をかけます。その結果、心筋梗塞などの心臓の合併症が増える危険があります。低血糖が直接の死因になっていなくても、低血糖に対する反応が心臓病を引き起こすなどして、死亡が増えているかもしれないのです。

 血糖を下げることにより、寿命が延びている部分はあるでしょう。しかし、薬には副作用が避けられません。薬の副作用によって、血糖を下げて寿命を延ばす効果以上の害をもたらすような状況があるのです。そして現実に糖尿病を薬で治療する場合には、その危険が複数の研究で明確に示されているのです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。