糖尿病患者は健康な人と比べて平均10年程度、寿命が短いといわれています。そこで、なんとか血糖を正常に近づけ、寿命も健康な人に近づけようと、食事や運動に気をつけて、薬で血糖を下げて、と頑張るわけです。
しかし、糖尿病治療の寿命に対する効果を検討した研究によって示された結果は、意外なものばかりです。
最初に示されたのは、以前取り上げたスルフォニル尿素という血糖を下げる薬やインスリンによって、心臓や脳の疾患をむしろ増加させたという1970年のUGDP研究です。死亡についても同様で、薬を使って血糖を下げたグループの方が寿命も短くなっています。8年後の死亡率で見てみると、プラセボ(偽薬)を使ったグループでは11・4%だったのに対し、トルブタミドという血糖を下げる薬を使ったグループでは19・8%で、インスリンを使ったグループですら、11・7%とプラセボグループとほとんど変わらないという結果でした。
さらに薬の治療で糖尿病合併症の予防効果を初めて示したUKPDS33(1998年発表)においても、薬による集中的な血糖コントロールグループで死亡率が年率1・79%に対し、通常治療グループでも1・89%とほとんど違いはなく、血糖が下がっても、それに応じた寿命の延長は示されませんでした。
2008年のACCORD研究においては、HbA1c6%を目指して厳しい薬の治療を行うグループと7%台の緩やかな治療のグループとを比較すると、前者の方が20%以上死亡が多いということが示され大きな話題を呼びました。
薬による厳しい治療によって、寿命の延長効果はいまだ示されていないばかりか、むしろ短命という研究結果が複数あるのです。
医療数字のカラクリ