医療数字のカラクリ

薬による糖尿病治療 長寿は証明されず

 さらに薬の治療で糖尿病合併症の予防効果を初めて示したUKPDS33(1998年発表)においても、薬による集中的な血糖コントロールグループで死亡率が年率1・79%に対し、通常治療グループでも1・89%とほとんど違いはなく、血糖が下がっても、それに応じた寿命の延長は示されませんでした。

 2008年のACCORD研究においては、HbA1c6%を目指して厳しい薬の治療を行うグループと7%台の緩やかな治療のグループとを比較すると、前者の方が20%以上死亡が多いということが示され大きな話題を呼びました。

 薬による厳しい治療によって、寿命の延長効果はいまだ示されていないばかりか、むしろ短命という研究結果が複数あるのです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。