医療数字のカラクリ

安く効果のある薬が使われていない

 メトホルミン(商品名メトグルコ)は糖尿病合併症予防効果が最も明確に示された薬ですが、インスリンの効きをよくするという点でよく似た薬にピオグリタゾン(商品名アクトス)という薬があります。

 メトホルミンが「UKPDS34」(英国前向き糖尿病研究34)という研究で確かな合併症予防効果が示されているにもかかわらずあまり使われなかったのに対し、このピオグリタゾンは、効果を明確に示した研究がないにもかかわらず、非常に多く使われた薬です。

 ピオグリタゾンの治療効果を検討した研究結果を見てみましょう。この研究はPROactive研究と呼ばれ、メトホルミンの検討をしたUKPDS34が発表された7年後の2005年に発表されました。

 治療効果を死亡、心筋梗塞、脳卒中、足の壊疽などを合わせた合併症で検討していますが、約3年間追跡の結果、合併症の発生率は対照群で21・7%、ピオグリタゾン群で19・7%、相対危険0・90と、はっきりした差が示されていません。薬の値段を比べてみると、メトグルコは500ミリグラム1錠で19円、アクトスは15ミリグラム1錠で73・8円。効果がはっきりしたメトグルコの方が安いのです。

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名郷直樹

「CMECジャーナルクラブ」編集長。東大薬学部非常勤講師。東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員、臨床研究適正評価教育機構理事)自治医科大卒。名古屋第二赤十字病院にて研修後、作手村国民健康保険診療所にてへき地診療所医療に携わる。95年同診療所所長。05年東京北社会保険病院臨床研修センター長。「『健康第一』は間違っている」などの著書がある。