徹底解説 乳がんのなぜ?

治療後のセックスはどうすればいいのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 乳がん治療で避けて通れない問題が治療後のセックス。夫婦や恋人は、これから先の関係性を築くうえで、治療直後のセックスをどうするかは重大だ。がん患者とそのパートナーの心の問題を長年研究してきた「国立がん研究センター」(東京・築地)がん対策情報センター・高橋都がんサバイバーシップ支援研究部長は「大事なのは相手の快感を大切にすること、そのためにコミュニケーションをとること」という。

 術後のセックスは“いつから再開していいのか?”。これで悩むカップルは多い。

「双方が望む気持ちがあったときが再開のタイミングで、正解はありません。手術直後でも、女性が痛がったり、怖がったりしない限りは問題ありません」

 ただ、双方が再開を望む気持ちを確認するには、コミュニケーションが大切だ。

「まだセックスに向き合う気持ちになれない時期に求められると、“こんなときに、なんて思いやりがないの”と怒りを覚える女性もいます。逆に、男性の“今はソッとしておこう”という優しい気持ちを、女性の方が“求めてこないのは魅力がなくなったから”と誤解することも。お互いの気持ちがすれ違わないように、気持ちを言葉にすることが大事です」

 セックスが女性ホルモンを増やし、乳がんの進行に悪影響を及ぼすと誤解するカップルもいるが、セックスと病気の進行はまったく関係ない。

 コミュニケーションが大事なのは、再開後も同じだ。

「気をつけたいのは“それは嫌”“痛い”“そこは気持ちいい”とお互いに言葉にして快・不快を伝えあうこと。本来、セックスはカップルの一方の快感を優先するのではなく、お互いの心地よさを大切にするもの。病気のあとはそれが一層大事になります。いきなり挿入を目指すのではなく、あせらずゆっくり行う。以前のセックスにとらわれず、これまでとは違った楽しみ方を見つけるカップルもいます」

 また、男性は乳がんの治療によって女性の体が変化することを知っておく必要がある。

「放射線や抗がん剤の治療の影響で、全身の倦怠感が残り、性欲そのものが低下することもあります。そんなときには無理強いしないことです」

 化学療法で白血球や血小板が減少する時期は感染や出血が増えるため、一時的に性生活を控えた方がいい。

 回復後は再開しても問題ない。手術した乳房やわきの下は知覚異常や不快感が残ることがある。愛撫するときはそれが相手にとって不快ではないか、コミュニケーションをしっかりとることだ。

「手術直後には、肩関節の動きが制限されて抱擁や体を支えることが難しくなることもあります。女性によっては男性の体で傷を圧迫されるのではないかと恐怖心を抱く人も。時間がたつにつれて改善することが多いのですが、特にはじめのうちは無理強いをせず、ゆっくりすすめていただきたい」

 抗がん剤やホルモン治療により卵巣機能が低下、膣が濡れにくくなって挿入時に強い性交痛を感じる女性もいる。挿入前に膣潤滑ゼリーを前戯として塗ってあげるのもいい。あるいは潤滑ゼリー付きのコンドームを使うのも手だ。

 女性が手術の傷痕を気にする場合は、最初は薄いTシャツやキャミソールを羽織ってもらうのもよいかもしれない。逆に「手術の痕をキチンと見て欲しい」という女性にはその気持ちをしっかり受け止めることが必要だ。

「自分の快感と同じくらい、相手の快感を大切にすること。そのためのコミュニケーションをとること。何よりもそれにつきます」