医療数字のカラクリ

「相対的に合併症が減った」という指標の意味

 さらにこの0・5%を逆数にすると200となりますが、これは治療必要数という指標で、200人厳しく治療すると、治療のおかげで1人の合併症が予防できるという指標になります。

 相対危険減少で11%合併症が減るというのでも治療効果が怪しいと感じる人もいるでしょう。しかし、それはどちらかというと治療効果を大きく見せる指標なのです。

 絶対危険減少では0・5%減るに過ぎない、治療必要数では200人治療しないと1人の合併症を予防できないとなります。

 そうなるととても有効な治療とは思えないのではないでしょうか。

 治療効果を表す指標によって治療効果に対する印象が変わってしまいます。自分が見ている指標が割り算によるものなのか、引き算によるものなのか、よく吟味する必要があるわけです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。