天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

90歳を越えていても手術はできる

順天堂大医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 標準的な手術をしたときに、その患者さんがどのくらいの可能性で元の生活に戻れるのか。反対に手術によって合併症を起こして戻れなくなってしまうのか。これが手術をすべきかどうかの線引きになります。高齢でもそれほど体力の衰えが見られない、心臓以外の病気による全身状態の悪化がない、手術後の補完的治療をすることができるといった患者さんなら、しっかりした治療計画を立てれば手術可能です。私も、大動脈瘤だった98歳の患者さんや、91歳の患者さんの冠動脈バイパス手術をした経験があります。どちらも、それなりに全身状態に問題がなかった患者さんです。また、加齢によって筋肉が減少している「サルコペニア」や、運動能力や活動が低下している「フレイル」が進んでいた80代後半の患者さんを手術したこともあります。この時は、まず入院してもらって栄養や運動をしっかり管理して、本人に手術への意欲が表れた段階で手術を行いました。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。