標準的な手術をしたときに、その患者さんがどのくらいの可能性で元の生活に戻れるのか。反対に手術によって合併症を起こして戻れなくなってしまうのか。これが手術をすべきかどうかの線引きになります。高齢でもそれほど体力の衰えが見られない、心臓以外の病気による全身状態の悪化がない、手術後の補完的治療をすることができるといった患者さんなら、しっかりした治療計画を立てれば手術可能です。私も、大動脈瘤だった98歳の患者さんや、91歳の患者さんの冠動脈バイパス手術をした経験があります。どちらも、それなりに全身状態に問題がなかった患者さんです。また、加齢によって筋肉が減少している「サルコペニア」や、運動能力や活動が低下している「フレイル」が進んでいた80代後半の患者さんを手術したこともあります。この時は、まず入院してもらって栄養や運動をしっかり管理して、本人に手術への意欲が表れた段階で手術を行いました。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」