天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

90歳を越えていても手術はできる

順天堂大医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 入院すれば、朝昼晩と規則正しく食事が出てきますし、看護師さんが付いてリハビリもしてくれます。部屋が温まった状態でシャワーや風呂にも入れます。高齢者の独り暮らしよりもはるかに良い生活環境といえます。心臓の症状というのは、そうした状況の中で管理していれば、よほど状態が不安定な場合以外は表れません。それが続けば、全身状態も回復してきます。こうなってからが手術を行うタイミングです。

 こうした管理を行った患者さんは、これでいよいよ手術……となったときにほとんど同じ言葉を口にします。「先生、手術しなくちゃダメですか?」と言うのです。実はこれこそが重要です。そこまで患者さんの全身状態が回復しているということだからです。

 この状態まで回復した患者さんは、手術を受けてから日常生活に戻れるまでの期間が短くて済むようになります。全身が衰えてヨボヨボの患者さんなのに、心臓の病気だけを診て「これは重症だ。いますぐ手術しなければダメだ」というところで踏み切ると、術後の立ち上がりに心身の疲労が加わり、時間も手間もかかってしまうのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。