入院すれば、朝昼晩と規則正しく食事が出てきますし、看護師さんが付いてリハビリもしてくれます。部屋が温まった状態でシャワーや風呂にも入れます。高齢者の独り暮らしよりもはるかに良い生活環境といえます。心臓の症状というのは、そうした状況の中で管理していれば、よほど状態が不安定な場合以外は表れません。それが続けば、全身状態も回復してきます。こうなってからが手術を行うタイミングです。
こうした管理を行った患者さんは、これでいよいよ手術……となったときにほとんど同じ言葉を口にします。「先生、手術しなくちゃダメですか?」と言うのです。実はこれこそが重要です。そこまで患者さんの全身状態が回復しているということだからです。
この状態まで回復した患者さんは、手術を受けてから日常生活に戻れるまでの期間が短くて済むようになります。全身が衰えてヨボヨボの患者さんなのに、心臓の病気だけを診て「これは重症だ。いますぐ手術しなければダメだ」というところで踏み切ると、術後の立ち上がりに心身の疲労が加わり、時間も手間もかかってしまうのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」