前回に続き、UKPDS33(「英国前向き糖尿病研究33」)で評価された糖尿病の合併症について詳しく見てみます。
この研究で設定された糖尿病合併症は、突然死、高血糖低血糖による死亡、心筋梗塞、狭心症、心不全、脳卒中という太い血管が詰まって起きる合併症と、腎不全、足の指の切断、重症の出血、光凝固療法が必要な網膜症、片目の失明という細い血管が原因で起こる合併症が併せて評価されています。目については手術が必要な白内障も含んでいます。
それまでの研究では、血糖コントロールを厳格にすると太い血管の合併症がむしろ増えたという結果になり、その後の熊本研究で、細い血管の合併症に対する予防効果が示されました。そこで、UKPDS研究ではどうかが注目されたのです。
細い血管の合併症に関しては熊本研究と同様に、腎不全が100から73に減り、網膜の光凝固療法を受けた患者が100から71に減っています。
一方、致死的な心筋梗塞は100から94に少し減ったものの、致死的な脳卒中については100から117に増えるという結果でした。
つまり、減るような、増えるようなというあいまいな結果で、少なくとも明確に減るということは、ここでも示されなかったわけです。
1998年にUKPDS33が発表されて、厳しい血糖コントロールが合併症を予防することが明らかにされた、というのですが、実際は目や腎臓の合併症が30%ほど減るということが示されただけで、心筋梗塞や脳卒中の予防効果はいまだ不明のままだったのです。
医療数字のカラクリ