医療数字のカラクリ

「100の合併症が88に減る」は厳しい治療に見合うものなのか

 ひとによっては凄い、と感じるかもしれませんし、逆に、予防できるという結果には程遠い、と感じる患者さんもいるかもしれません。

 しかし、医師にとっては、単に偶然によってもたらされたものよりも明らかに大きい違いを示しているのだから、「統計学的に有意差のある結果」であり、効果があると判断できるのです。

 しかも、このUKPDS33は、目や腎臓の合併症に加え、心筋梗塞や脳卒中を含めた合併症予防効果を初めて明らかにしたとされる研究です。

 そのこともあって、多くの医師はこの研究結果をもって、糖尿病の血糖を厳しく下げることが重要だと言っているわけです。

 しかし、患者さんにとって100の合併症が88に減るということが、食事制限をして運動療法を行い薬を飲むなど、日々厳しい糖尿病の治療に見合うものなのかどうか、よく考えてみる必要がありそうです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。