小さな声でしゃべる人は、「小さな物音でも聞こえる」「耳の良い人が多い」「都会っぽく上品」。逆に、大きな声でしゃべる人は、「聞き返しが多かったり、耳がやや遠かったりする」「田舎出身で野蛮」――。そんな印象があると思います。
しかし、通常の場合、地声の大きさと耳の良さは関係ありません。声帯がもともと大きな声仕様になっていれば、自然と大きな声になります。
ちなみに私がそうです。おじいさん、おばあさんの患者さんには耳鼻科医として、聞こえやすいのでいい声だともいわれています。
田舎の大きな家で、大きな声でないと隣の部屋まで声が届かない環境で育ったような場合には、自然と地声が大きくなることもあるでしょう。都会の小さい家で育った人が、隣の家に迷惑がかかることがあるし、大きい声を出す必要もないので、小さな声でしゃべるということもあるかもしれません。それらは地声の性質や環境による生活習慣によるもので、耳の聞こえの良しあしとは関係ないのです。
家族の地声が大きい家庭にいると、その会話のボリュームに慣れ、小さな声の人との会話で聞き返しをすることもあるかもしれません。だからといって、耳が遠くなるわけではありません。
では、ヘッドホンでずっと音楽を聴き続けていると、難聴になるのでしょうか。
音が大きいほど耳へのダメージは大きくなります。たとえ適正な音量であっても、長時間音楽を聴けば聴くほど耳にかかる負担はかなりになります。
オペラ歌手やバイオリニストなどは、曲が短くても、毎日いっぱい練習するからか、自分の声や楽器から出た音で耳を悪くしてしまう人が確かに多く見られます。オペラ歌手は、音声の振動が原因なのか、歯を痛めてしまう方もいるようです。ミュージシャンも、特にドラムをやっている人は、耳が悪くなることがあります。
また、工事現場など、常に大きな音が発生する環境で長年働いていると、徐々に聞こえが悪くなることがあります。これを「騒音性難聴」と言います。聴力としては、ある高い音がぼこっと聞こえなくなり、一部V字形の聴力像になります。
ヒトの音を聞く細胞は再生しません。難聴を甘くみてはいけません。
耳鼻科の病気