耳鼻科の病気

酒とロックがめまいを招く!?

 日頃のストレス発散のため、仲の良い友達と音楽フェスティバルに行き、ビールを飲みながら好きなロックを夜までガンガン聴いて楽しんだ――。この夏、そんな経験をした方は大勢いらっしゃると思います。

 気分は最高かもしれませんが、その後に“耳鳴りがする”“耳がふさがったような気がする”“ふわふわする”といって来院される患者が結構いました。当院だけかもしれませんが、若い女の子が多いような気がします。

 強大な音を聴いた後に発症する急性の難聴を、「音響性外傷」といいます。

 昔は「ディスコ難聴」ともいわれていましたが、今では「ロック難聴」ともいうようです。コンサートでスピーカーのすぐ近くにいた場合や、ヘッドホンで強大な音を聴いたときに発症することが多いようです。

 ロック難聴といわれるぐらいですから、クラシックのコンサートでなった人は、まず見たことがありません。ただし、弦楽器のすぐ近くに座る人は、かなり音が大きいので注意が必要です。

 また、突然の爆発などが原因で耳が聴こえなくなったら、この音響性外傷か、圧力変化による外リンパ瘻(ろう)になってしまった可能性があります。

 外リンパ瘻とは、鼓膜の内側の中耳とその奥の内耳を隔てる内耳窓に小さな穴があくことで、難聴やめまいを発生する病気です。程度によっては入院、手術が必要になります。過労、飲酒、長時間大きな音を聴くとなりやすいといわれています。

 治療は、第一に安静です。音のないところでゆっくり休むこと。薬としては副腎皮質ホルモンの投与を中心に行います。

「コンサートのあとで、音が聴こえづらくなったけど、ちょっと疲れたせいで、若いから明日には治るだろう」

 そんなふうに軽く考える人もいるかもしれませんが、これは間違いです。若い人の難聴には注意が必要なのです。

大場俊彦

大場俊彦

慶應義塾大学大学院博士課程外科系終了。医学博士甲種日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。日本レーザー医学会認定専門医。日本気管食道科学会認定専門医。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会フェロー。国際レーザー専門医。厚生労働省補聴器適合判定医・音声言語機能等判定医。日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴判定医・補聴器相談医。