耳鼻科の病気

今から始める来年の花粉症対策

 6月に入ってスギ、ヒノキの花粉の飛散が終わり、花粉症によるくしゃみ、鼻水、鼻づまりからようやく解放されたという人も多いことでしょう。

 しかし、もし、あなたが重症な花粉症でホントに困っているなら、いまから来年の花粉症対策を始めてはいかがでしょうか?
 お勧めしたいのは根治が期待できるアレルギー免疫療法です。アレルギーの原因となるものを徐々に与えて、それに対する抵抗力をつけるという方法で、別名「減感作療法」といいます。鼻だけでなく目にも効きます。

 減感作療法には皮下注射と薬の舌下投与の2通りの方法があります。皮下注射は痛みがありますが、舌下投与は口にアレルギーの素を含み、抵抗力を高めるだけ。苦痛はありません。舌下から吸収することで、アレルギー反応に深い関係のある免疫機能がある、あごの下の左右のリンパ節にエキスを届きやすくするのです。

 スギ花粉を対象にした注射は約80%と高い有効率があります。ただし、通院が原則だけに患者さんには面倒かもしれません。舌下の
場合は有効率こそ70%程度とやや劣るものの、基本的に自宅で治療できるというメリットがあります。

 もっとも、スギ花粉エキス「シダトレン」は昨年発売された新薬。厚労省の決まりで発売後約1年間は2週間分しか処方ができないことになっています。そのため、当初は2週間に1回の通院が必要です。ちなみに、この薬は講習を受けた医師の処方箋なしに薬局で買うことはできません。

「シダトレン」の使い方は簡単です。舌の下にこの液をたらし、2分間そっとしておき、その後に飲み込みます。これを最初の2週間で量を増やしていき、3週目からは同じ量の薬を毎日舌下投与します。1回目の舌下投与は医療機関で行いますが、以降は毎日自宅で行います。

 根治するためには注射も舌下も2~5年くらい続けることが必要です。 舌下減感作療法はスギ花粉の飛散が始まる3カ月以上前から治療を開始すると効果的ですが、理想は6月からといわれています。

 ちなみに、注射、舌下ともにアナフィラキシーと呼ばれる強いアレルギー反応を起こす可能性があります。ただし、これまでの海外での実績で重篤な副反応はきわめてまれであり、舌下免疫療法は従来の注射による方法よりもかなり安全とされます。

大場俊彦

大場俊彦

慶應義塾大学大学院博士課程外科系終了。医学博士甲種日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。日本レーザー医学会認定専門医。日本気管食道科学会認定専門医。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会フェロー。国際レーザー専門医。厚生労働省補聴器適合判定医・音声言語機能等判定医。日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴判定医・補聴器相談医。