耳鼻科の病気

うつ病治療を応用した「認知行動療法」

 耳鳴りによる苦痛の程度は心理的なことにも左右されます。そのため、以前からカウンセリングによる心理治療も期待されていました。最近は、うつ病の治療に用いられる認知行動療法を応用することが有望と考えられています。

 認知行動療法とは、ものの受け取り方や考え方(認知)に働きかけて、気持ちを楽にする精神療法(心理療法)の一種です。

 まず耳鳴りに対するメカニズムも含めた詳しい学習を行います。さらに認知行動療法自体の理解、耳鳴りの症状の詳細な説明や、感情のコントロールの耳鳴りに対する有用性も勉強します。

 耳鳴りによるマイナスの考えや態度を「耳鳴りがあっても大丈夫」という具合にプラスの考え方に変えるように習慣づけ、今まで耳鳴りを悪化させてきた習慣を変更します。そして、耳鳴りがひどくなったときにどう心をもっていくかも学習するのです。

 また、音の再学習として脳に音を聞かせることで耳鳴りから意識をそらし、脳が耳鳴りではなく外部の音に集中できるようにもします。

 次回はこの耳鳴りの認知行動療法についてさらに詳しく説明しましょう。

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大場俊彦

大場俊彦

慶應義塾大学大学院博士課程外科系終了。医学博士甲種日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。日本レーザー医学会認定専門医。日本気管食道科学会認定専門医。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会フェロー。国際レーザー専門医。厚生労働省補聴器適合判定医・音声言語機能等判定医。日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴判定医・補聴器相談医。