耳鼻科の病気

耳鳴りは難聴を伴うことが多い

 耳鳴りとは、明らかな音がない状態なのに音を感じる感覚を指し、耳鳴(じめい)ともいいます。

 人口の10~15%が経験するといわれていますが、そのうちの20%程度が重い耳鳴りに苦しんでいるといわれています。日本では300万人が苦しんでいると報告されています。

 耳鳴りは2つに大別されます。「他覚的耳鳴」には耳の周りの筋肉や骨のけいれん、血液が流れる音によるものがあり、患者さんの耳の中にゴムのチューブを入れて確認します。

「自覚的耳鳴」は、現実には音源が存在していないのに感じる音覚で、本人にしか聞こえません。

 一般的に多いのは、自覚的耳鳴です。音がないのになぜ耳鳴りがするのか?

 詳しくはわかっていませんが、明らかなのは耳鳴りの多くは難聴に伴い発症することです。

 実際、難聴者の約半分が耳鳴りを訴え、逆に耳鳴りがある方の約90%に何らかの難聴が認められるとの報告があります。

 外耳や特に鼓膜の奥の中耳の障害でおきる伝音難聴の患者さんの25%は、耳鳴りがあるといわれています。このとき、伝音難聴に対する治療(薬や鼓室形成術などの聴力の改善手術)を行うと、耳鳴りの軽減が期待できます。

 耳の神経障害が原因の感音難聴の患者さんは約60%が耳鳴りを合併しているといわれます。特に急性タイプ(突発性難聴、メニエール病、音響外傷)は、80%以上といわれています。

 大音響のロックコンサートに行ったあと、一時的に耳鳴りが出て嫌な思いをした方もいらっしゃるでしょう。

 急性タイプは蝸牛(かぎゅう)にある耳の神経の細胞(有毛細胞)が一時的に障害を受け、そのまま細胞が死んでしまうことで起こります。哺乳類の耳の細胞には再生機能がないので、有毛細胞は生き返りません(鳥の場合は生き返るそうです)。

 有毛細胞は繊細で、周波数別にきちんと並んでいます。難聴で聞こえなくなった音と耳鳴りの音色は似ています。高周波数に関係した耳の細胞がやられてその音が聞こえなくなると、ピーンといった高い音色の耳鳴が生じます。

 治療は細胞を死なせないため、早めにステロイドなどの強い薬を投与します。細胞が回復すれば難聴も治り、耳鳴りも回復していくのです。

大場俊彦

大場俊彦

慶應義塾大学大学院博士課程外科系終了。医学博士甲種日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。日本レーザー医学会認定専門医。日本気管食道科学会認定専門医。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会フェロー。国際レーザー専門医。厚生労働省補聴器適合判定医・音声言語機能等判定医。日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴判定医・補聴器相談医。