今回は歯科インプラントにおける耳鼻咽喉科の役割についてお話ししましょう。
インプラントとは、体内に埋め込む医療機器や材料の総称です。心臓のペースメーカー、人工内耳、人工関節などはいずれもインプラントです。
しかし一般的に「インプラント」とは、歯科インプラントの意味で用いられることが多いので、ここでは歯科インプラントをインプラントと呼びます。
さて、上顎にインプラントを埋め込むと、一時的に上顎洞に炎症が起きてしまい、いわゆる蓄膿症になってしまうことがあります。
抗生物質の投与でほとんどの炎症は引きますが、上顎洞に炎症が起こりやすい鼻の場合、炎症が引かずにうみが蓄積され、長期間の抗生物質の投与や再手術が必要になり、せっかく埋め込んだインプラントを抜いてしまうこともあります。
それは上顎洞の上にある換気管が関係します。換気管が十分にあいていると、インプラント手術後に上顎洞に炎症が起きても、うみが換気管を通過して出ていきます。
ところが、鼻が曲がっていて(鼻中隔弯曲症)換気管周囲のスペースが狭かったり、換気管周囲にポリープができて換気管自体が詰まっていると、炎症が起きやすいのです。
これまでの治療は、上顎洞の下の方に鼻とつながる穴(対孔)を作り、上顎洞のうみを出していました。しかし、対孔から反対に細菌が上顎洞に入ってきてしまうため、最近は耳鼻科医が麻酔下に内視鏡を使って、換気管の穴を大きくし、周囲をきれいにします。場合によっては鼻の曲がりを矯正することもあります。
このように鼻の構造が悪いと、インプラントの手術後に問題が起きることがあるのです。
予防するためには、歯科医がインプラント手術前に撮る歯科用CT(コーンビームCT)を利用することです。できれば、歯の上にある鼻の部分まで撮ってもらい、鼻の曲がりや上顎洞の換気管周囲のスペースの状態を把握するといいでしょう。その上で、必要があれば耳鼻科医に鼻の状態の改善を依頼することです。
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