耳鼻科の病気

正しい耳の掃除法

 耳そうじをしていて、耳の中を傷つけてしまったことはありませんか。耳の中は非常にデリケート。正しいお手入れ法を紹介しましょう。

 耳の穴の入り口から鼓膜までの筒状の部分を「外耳道」といい、耳そうじなどに伴うトラブルは、主にこの部分に起こります。外耳道の入り口から、約3分の1は軟骨でできており(外耳道軟骨部)、汗腺組織があるため、耳垢がたまります。その奥の3分の2は骨でできていて(外耳道骨部)、ちょっと触れただけでも強い痛みを感じます。

 耳そうじをしていて痛いと感じたら、それ以上深くはおこなわないようにしましょう。

 耳垢は、外耳道にある汗腺や皮脂腺の分泌物に、はがれ落ちた表皮細胞や毛、粉塵などが混在してできます。専門的には「じこう」と読み、英語では「イヤー・ワックス」といいます。耳垢には乾燥してポロポロしている乾性耳垢と、あめのように湿った軟らかい湿性耳垢があり、遺伝と深く関係しているといわれます。欧州系やアフリカ系の人はほとんどが湿性型で、日本人は乾性型が多数を占めています。

 湿った耳垢の人だと、キャラメルのように耳の奥に固まって詰まってしまい、難聴の原因になることがある。こうなると耳鼻科で処置してもらうしかありません。耳垢を溶かす薬を耳の中にたらした後、耳専用の顕微鏡で見ながら耳そうじをすることになります。

 ただ、汚いと思われているでしょうが、耳垢には殺菌作用や外耳道表面の乾燥を防ぎ、保護する働きなどがある、とされています。また、昆虫などの侵入を防いでくれる機能が指摘されており、「ないほうがよい」ともいえないのです。

 以前、沖縄の離島に派遣されていたとき、寝ている間に外耳道に小さな虫(ゴキブリ等)が入ってきた患者さんが、よく診療所にやってきました。

 きれいに掃除された耳の中に虫の羽が見えたとき、耳垢には確かに昆虫の侵入を防ぐ作用があるのかもしれない、と納得したことがあります

大場俊彦

大場俊彦

慶應義塾大学大学院博士課程外科系終了。医学博士甲種日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。日本レーザー医学会認定専門医。日本気管食道科学会認定専門医。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会フェロー。国際レーザー専門医。厚生労働省補聴器適合判定医・音声言語機能等判定医。日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴判定医・補聴器相談医。