漢方達人をめざせ!

八味地黄丸で前立腺がんと20年

 がんの種類やステージ、その人の年齢や死生観によって、どういう治療法がベストかは変わってきます。

 漢方薬の専門家である私は、漢方薬ががんに発揮する効果を十分に理解していますし、時に抗がん剤などにはない高い効果を発揮するとも考えています。しかし、それでも手術、抗がん剤、放射線治療といった3大治療法で完治を目指せるのに、それをやめさせてまで漢方薬を勧めることはありません。

 ただ、3大治療法を選ぶにしても、漢方薬を併用することで患者さんの苦しみを減らせることはたくさんありますから、大いに活用してほしいと思います。

 現在80歳のAさんは、20年前に早期前立腺がんと宣告されました。医療技術の進歩は目覚ましいですから、当時と今ではできること、できないこと、副作用の程度などは大きく違います。当時60歳だったAさんは医師の説明から積極的な治療を拒否し、腫瘍マーカーをチェックしながら経過観察することを選択しました。同時に、漢方薬の処方を求めて漢方薬局にいらっしゃったのです。

 前立腺がんは「腎虚」と考え、それを改善する補腎薬の「八味地黄丸」をお勧めしました。男性更年期症状の不調を感じてもおかしくない年代でしたが、八味地黄丸は体全体を元気にする作用があり、不調とは全く縁がなく、20年が経ちました。

 病院に行くと、今でも手術を勧められるそうです。がんは進行すると手術が不可能になるので、20年前に手術を勧められ、今も勧められているAさんは、がん細胞がそれほど増殖していないということかもしれません。

「このまま寿命が尽きるまで、前立腺がんと付き合っていくよ」とAさんはいつもおっしゃいます。

久保田佳代

久保田佳代

父は乳児院院長、母は薬剤師、長女は歯科医、次女は眼科専門医という医療一家に産まれたが、昨今の臓器医療である西洋医学とは違い、人に向き合い、カラダとココロの両面から治療が行える漢方を志し20余年経つ。昭和薬科大学卒業、老舗漢方薬局を経て、「氣生薬局」開局。サプリメントアドバイザー、漢方茶マイスター、日本プロカウンセリング協会1級など多数資格取得。「不妊症改善における実力薬局100選」に選ばれている。