漢方達人をめざせ!

失敗をいろいろ考えて眠れない

 ストレスで眠れない、とおっしゃる人は多いです。でも、「ストレス」「不眠」の2つのキーワードは共通していても、当然ながら、だれもが同じ漢方薬で解決できるわけではありません。さらに突き詰めて話を聞かなくては、何が効くか分からない。

 Aさんは、大柄な体形で、見るからに“オレに付いてこい”タイプ。豪放磊落な雰囲気を漂わせています。しかし、実際は繊細なところがある人で、常に相手が何を求めているかを気にしています。飲み会に行くと、好き勝手にお酒を飲んでいるように見えながら、グラスが空いている人にはついでやり、皿が足りなくなったら店員さんに頼んだりと、さりげなく気遣いをしてくれます。

 彼が眠れないと言ってきた時、その繊細さに関係があると思いました。話を聞くと、その日、うまくいかなかったこと(本当にうまくいったかどうかではなく、彼が気になること)を、寝る前につらつらと考えてしまうのだとか。

 すると、「ああすりゃよかった」「ここが悪かった」という考えが次々に頭に浮かび、眠れなくなるのだと言います。

 そんな彼に出したのは、抑肝散加陳皮半夏です。ワーッと物事を考えて眠れない人、ノイローゼ気味で不眠の人にお勧めしている漢方薬。気が旺盛になっているのを鎮める作用があります。

 しばらくすると、スッキリした顔を見せてくれるようになったAさん。今は、寝る前にはマイナスのことではなく、プラスのことを考えるように“思考の変換”をはかっているところです。

久保田佳代

久保田佳代

父は乳児院院長、母は薬剤師、長女は歯科医、次女は眼科専門医という医療一家に産まれたが、昨今の臓器医療である西洋医学とは違い、人に向き合い、カラダとココロの両面から治療が行える漢方を志し20余年経つ。昭和薬科大学卒業、老舗漢方薬局を経て、「氣生薬局」開局。サプリメントアドバイザー、漢方茶マイスター、日本プロカウンセリング協会1級など多数資格取得。「不妊症改善における実力薬局100選」に選ばれている。