漢方達人をめざせ!

夜中に何度もトイレ

「夜中に何度もトイレに行きたくなるのです。漢方薬でなんとかなりませんか?」とSさん(55)。

 Sさんは以前、夜中に何度も起きなくてはならない仕事に就いていました。

 そこで、「トイレに行きたくて目が覚めるの? それとも、目が覚めてトイレに行きたくなるの?」と聞きました。

 しばらく考えた後、Sさんは「どちらかというと、後者かもしれない」。それなら、まずは目覚めてもトイレに行かないようにしてみて、とアドバイスしました。

 膀胱に少し尿がたまっただけで、トイレに行きたくなる“クセ”がついているのではないかと考えたからです。目が覚めてもトイレに行かないようにすることで、膀胱に“もっと尿がたまってからトイレに行けばいい”と正しい認識をさせるのです。

 しばらくすると、夜中に目覚める回数とトイレの回数が減りました。しかし、朝までぐっすりと眠れるところまではいかず……。

「寝た時に足がほてる。冬の寒い時でも、足だけ布団から出してしまう」という症状もSさんにあったので、精神を安らかにして眠りに誘う酸棗仁湯(さんそうにんとう)と、体の中の熱を鎮め、潤す作用がある知柏地黄丸(ちばくじおうがん)を処方しました。

 知柏地黄丸は、更年期の不調改善にも効果的な漢方薬。Sさんの年齢から、夜中に目が覚めるのは更年期によるものかもしれないとも思ったのです。

 結果、Sさんは質のいい睡眠を手に入れることができました。

久保田佳代

久保田佳代

父は乳児院院長、母は薬剤師、長女は歯科医、次女は眼科専門医という医療一家に産まれたが、昨今の臓器医療である西洋医学とは違い、人に向き合い、カラダとココロの両面から治療が行える漢方を志し20余年経つ。昭和薬科大学卒業、老舗漢方薬局を経て、「氣生薬局」開局。サプリメントアドバイザー、漢方茶マイスター、日本プロカウンセリング協会1級など多数資格取得。「不妊症改善における実力薬局100選」に選ばれている。