どうなる! 日本の医療

勤務医が危ない

「起きて!!」「分かりますか――」

 午後7時20分、埼玉県内の地域病院救急センター治療室で女性看護師の声が響きわたる。

 30分ほど前に救急搬送されてきた70代の男性患者に必死で呼びかけているのだ。男性患者は治療中の肝硬変が急変。病院に運び込まれたときには、肝硬変の患者特有のどす黒い顔色に変わり、意識はもうろうとしていた。

 この日の当直は循環器が専門の30代の男性医師2人と3人の看護師。医師のひとりが簡易検査した後にICU(集中治療室)に運び
込むよう指示。看護師2人が患者が横たわるストレッチャーをきしませながら移動させる。

 それから15分。今度は診察室が騒がしい。家族に付き添われて訪れた急患に、診察した医師が切迫した声を上げる。

「心筋梗塞症で間違いありません。すぐにカテーテル手術をします」

1 / 4 ページ

村吉健

村吉健

地方紙新聞社記者を経てフリーに転身。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を築く。当初は主に政治分野の取材が多かったが歴代厚労相取材などを経て、医療分野にも造詣を深める。医療では個々の病気治療法や病院取材も数多く執筆しているが、それ以上に今の現代日本の医療制度問題や医療システム内の問題点などにも鋭く切り込む。現在、夕刊紙、週刊誌、月刊誌などで活躍中。