レジリエンス高め若々しく生きる

「命のロウソク」テロメアを長く保つ

 見た目が若い人は、レジリエンス(回復力、抗病力)が高く、長生きできる――。信じられないかもしれませんが、本当のことです。権威ある医学誌「BMJ」(英国医師会雑誌)には、913組の双子を調べてみたところ、同じ遺伝子を持っているにもかかわらず、見た目が老けている方が早死にだったという研究が報告されています。

 その理由を調べてみると、見た目が若い方は「命のロウソク」が長いことがわかりました。人間には電池の残量のように、細胞の寿命を決めているモノがあります。それが「テロメア」です。

 人間の細胞の中には、DNAを格納している染色体があります。この染色体は「X」の形をしていて、その四隅にテロメアがついています。テロメアは、細胞が分裂するたびに短くなっていきます。そして、ある程度まで短くなってしまうと細胞はそれ以上分裂できなくなり、死んでしまうのです。

 実際に、テロメアの長い人の方が長生きであることが医学誌「ランセット」に報告されています。また、テロメアが長い人は顔のシワが少なくて見た目が若く、逆に短い人は動脈硬化の傾向が強く、狭心症や心筋梗塞が多いこともわかっています。命のロウソク=テロメアを長く保つことができれば、レジリエンスを高めることができるのです。

 その長短は多少の個人差はあるものの、努力することで短縮を予防できます。そのひとつが、「ちょっと汗ばむ程度の運動」です。同じ遺伝子を持っている双子で調べてみると、運動の習慣を持っている方がテロメアが長いことがわかっています。

 食生活では「葉酸」というビタミンがテロメアを保護してくれます。葉酸はブロッコリーに多く含まれています。また、赤ワインに含まれるポリフェノール「レスベラトロール」、青魚に豊富な「EPA」、アミノ糖のひとつ「グルコサミン」もテロメアを守ります。

 逆に、喫煙、過度なストレス、うつ状態などはテロメアを短くする要素であることがわかっています。

 テロメアを長く保てば見た目が若くなり、長寿につながります。長くするのも短くするのも、あなたの生活次第です。

江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。