レジリエンス高め若々しく生きる

チョコレートが「酸化」を抑える

 レジリエンス(回復力、抗病力)を身につけるには、体の「酸化」を防ぐことも大切です。

「酸素は“毒”である」と言うとみなさんは驚かれるかもしれません。もちろん人間は酸素がなくては生きていけません。人間は酸素を取り込んで、ミトコンドリアという工場でATPというエネルギーをつくります。この際、「活性酸素」という細胞毒がどうしてもできてしまうのです。

 ミトコンドリアから漏れた活性酸素は、遺伝子を障害してがんをつくります。前立腺肥大、高血圧、動脈硬化、認知症、病的な老化など、ほとんどの病気に活性酸素が関係しています。ろうそくは、酸素があると激しく燃えますが、それだけろうそくの寿命は短くなるともいえます。これと同じことが私たちの体でも起こっているのです。

 一般的にラットの寿命は3年ですが、100%酸素の存在下ではわずか3日で死んでしまいます。私たちは酸素がなくては生きていけませんが、同時に酸素を吸うことで体をさびつかせたり、老化させたりする矛盾を抱えているわけです。

 この活性酸素を抑える薬があります。たとえば、胃潰瘍の薬である「ムコスタ」は、活性酸素を抑えて胃潰瘍を治します。「エダラボン」は、脳梗塞の時に過剰な活性酸素を抑えて脳梗塞の広がりを抑える薬です。

 とはいえ、健常者がこれらの薬を常用するのは現実的ではありませんので、活性酸素を抑える食事を紹介しましょう。

 米国農務省が発表した「活性酸素吸収能(ORAC)」という数値があります。これによれば、活性酸素を抑える食材は、レーズン、バジル、玄米、チョコレート、ぬか、ふすま(小麦粉の表皮部分)、ココア、シナモン、松の実となっています。

 中でも、チョコレートには注目です。権威ある科学誌「ランセット」に、「チョコレートを多く食べている国とノーベル賞の受賞率は比例している」という報告が掲載されました。チョコレートは、記憶をつかさどる脳の海馬の働きを活性化するため、認知症予防も期待されています。また、1日20グラムのチョコレートを週に3回食べると、動脈硬化を抑えることもわかっています。

 砂糖がたっぷり含まれたチョコレートは逆効果ですが、カカオ90%以上のダークチョコレートは脂肪や糖分が少ないのでおすすめです。

江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。