レジリエンス高め若々しく生きる

バイアグラが老化を防ぐ?

 レジリエンス=回復力・抗病力を身につけるには、「糖化」を防ぐことが大切です。糖化とは、血糖が高い状態が続くことで体のタンパク質が糖とベタベタくっつき、細胞がボロボロに老化する現象です。血糖が高いと、最終糖化産物(AGE)という“毒”が体の中でつくられ、動脈硬化、認知症、がんをもたらすのです。

 そこで、AGEをなるべく体内で増やさないようにする食事法を紹介します。AGEは「焼く、揚げる」調理法を行うと増えてしまいます。230度以上の高温で調理された料理には気をつけてください。ベーコン、ハンバーガー、バター、マヨネーズなど「褐色化している食べ物」もAGEが高い食品です。食べ過ぎに注意しましょう。

 AGEを増やさないためには「煮る、蒸す」調理法を取り入れるようにすることです。食後に緑茶を飲むとAGEの産生が減ることもわかっています。

 食事以外では、勃起不全の治療薬として知られる「バイアグラ」に、AGEによる糖化から体を守る作用があることがわかりました。

 AGEは、人間の細胞の表面にあるAGEレセプターという“吸盤”のようなものにくっつくことで、細胞に悪い刺激を与えます。バイアグラをはじめ、シアリス、レビトラ、ザルティアといったPDE5阻害薬は、その“吸盤”の数を減らすため、AGEの悪い刺激が細胞に伝わりづらくなるのです。

 バイアグラは、糖化と同様に老化をもたらす「酸化」も予防することがわかっています。バイアグラを6カ月間、週1回1錠飲むと、体をサビさせる活性酸素の量が3分の1に減ったという研究が報告されています。

 この「バイアグラ週1回法」は、男性ホルモンであるテストステロンも2倍に増加させました。男性更年期障害にも改善効果をもたらすのです。

 さらに、PDE5阻害薬には、血管の内皮機能を改善して動脈硬化を予防する効果があります。PDE5阻害薬、茶カテキンと併せて抗がん剤を使うと、抗がん剤の効き目が良くなるという報告もあります。実際、バイアグラを服用している人には前立腺がんが少ないのです。

 今後はバイアグラなどのPDE5阻害薬が、アンチエイジングの薬として広く使われるようになるかもしれません。

江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。